現象の奥へ

【詩】「Epitaphs(エピタフ、墓碑銘)」

【詩】Epitaphs(エピタフ、墓碑銘)

 

 前髪に雪降かゝる鷹野かな 吏明

 

ベケットのフランス語詩の題名である。しかし、Epitaphは、英語である。

フランス語なら、épitapheと綴る。しかし、中身はフランス語である。

il ne sait plus ce qu’on lui disait(ひとが彼に言ったことをもはや彼はわからない)

il ne sait plus ce qu’il se disait(もはや自分が思ったこともわからない)

 

on ne lui dit plus rien(もはやひとは彼に何も言わない)

il ne se dit plus rien(もはや彼は何も思わない)

 

en se disant qu’il y a rien à dire(何も言うことはないと思いながら)

plus rien à dire(もはやなにも言うことはない)

 

小姓の前髪に

雪が降りかかる。それは、

鷹を撃つ野

ではなく、

鷹を武器として使用する

野。

古き、よき? かは、

on ne sait plus rien.(わからない)