現象の奥へ

『満州事変から日中戦争へ』(岩波新書)──文章が下手で世界史的視点を欠く(★★)

満州事変から日中戦争へ―シリーズ日本近現代史〈5〉』(加藤陽子著、岩波新書、2007年)

 たとえば、第二次世界大戦より悲惨だとされる第一次世界大戦の始まりは、オーストリア皇太子の暗殺であるが、それまでの「経緯」は、フランスとドイツの経済戦である。これとよく似た「経緯」で、日中戦争が起こっているが、そもそも戦争というものは、トロイ戦争から近代戦に至るまで、略奪目的である。本書はそういった世界史的視点がまったくなく、ただ軍部を中心した「極秘資料」などを含めた資料を並べて、主に軍の事情を書き連ねている。文章もへたで、オバチャンのエッセイといった印象を、いかめしい「論文」調の仮面の下にちらりと抱く。ただ、立場的には、右翼ではなく、どちらかといえば、左翼系? 日本学術会議を否認された六人のうちの一人であるが、残念ながらそれほどのキレ者でもないので、メンバーであってもなくても、それほどの損失はないと考えられる。会長のノーベル賞学者のニュートリノの梶田氏からすれば、この著者のレベルはかなり下。

 まったく、岩波新書の本シリーズは、著者によってピンキリである。本シリーズ第6巻、『アジア・太平洋戦争』の吉田裕氏とは雲泥の差。

 

*****

余談:あれ? 総理大臣の名前を忘れた……あ、スガか(笑)。スガ氏は、任命拒否の6人のうち、このセンセイの名前だけは知っていると答えたそうな。だいたい、日本の学問界は、思想的、レベル的には、かなりネジれていて、スガのアタマでは理解できないのではないの? 当然ながら、裏で入れ知恵しているやつらがいるんでしょうね。