現象の奥へ

【本】『働き方5.0: これからの世界をつくる仲間たちへ』──コンピュータ文化もまたイデオロギー(★★)

『働き方5.0: これからの世界をつくる仲間たちへ』(落合 陽一著、2020年6月3日、小学館新書)

 本書で言及されている、「意識高い系」の人というのは、確かに、ネットで、それも、Facebookで、多量に見かけます。しかしこの著者の「意識高い」という、言葉の使い方は、これまでの、私が知っている日本語とは少し違った使い方のように思います。私が知っている使い方だと、「意識が高い」=「高い理想を持っている」という内容だと思いますが、この著者は、「意識高い」=「内容もないのに上から目線のやつ」のようです。それはともかく、この著者は、「意識」というものに対してどういう定義を与えているのか? フロイト的にか? フッサール的にか? カント的にか? まずそれを定義するところから始めないと、これからはデジタルの時代で、コンピューターの時代で、ネットの時代と言ってもしょうがない。現に30年前、同じような立場の、東京大学の教授は、「インターネットは長く続かない」という予測を立てていました。なぜかというと、技術が追いつかないという理由からでした。しかし、アメリカのゴア大統領が、インターネットで大陸を結ぶ構想を提唱し、それは実現されました。そして太平洋にも海中に、ネットのラインがあります。それによって、ネットは世界を結ぶようになりました。著者は8歳からパソコンに触っているのがご自慢(笑)のようですが、アメリカのGAFA創始者のみなさんのように、専門の家庭教師について勉強されていたのでしょうか? 少なくとも、言語はべつにプログラミング言語だけでなく、とりあえず、母国語と英語、仏語、独語をこなして、ソシュールの思想についてもなにか言及できる程度の教養を持ってないと、コロナ後も同じ地位におられるのかは、疑問ですね。これまでも「時代の寵児」は、あの前科一犯(?)だかのなんとかエモンという方もおられましたし(笑)。