現象の奥へ

【詩】「猫の名前(Cats Name)」

「猫の名前(Cats Name)」

The Naming of Cats is a difficult matter,
                (T.S.ELIOT)

ずいぶんと猫を飼った、
名前は忘れた。一匹だけ覚えているのは、
ゴドー。
飼った時期は、高校時代と、すぐ思い出せる。
それより前は、ゴドーなんて思いつきもしない。
高一のとき、高校のすぐ近くにあった
公共図書館で、サミュエル・ベケットの『ゴドーを待ちながら
を借り、
のめり込んだ。
不条理劇と名付けれた世界。
それで、どこからやってきたかも忘れた猫に、
ゴドーと名付けた。まだ、
完全におとなになってなかったかも知れないが、
あるとき、仕事から帰った母が、
その死骸を発見した。
くみ取り式の便所(トイレというにはちょっと面はゆい)のなかで。

「そりゃまさに"ふん死”だな」

と、ともだちの父親が言ったそうな。

その名前だけ忘れず、

猫にしゃれた名前を付けたらいかんと

肝に銘じた

が、そのあとも、いろいろしゃれた名前を付けた。

たいていは、車にひかれたりして短命で、

放し飼いの猫は心を痛ませる。

たしかに、たしかに、たしかに。

エリオット先生。

だが、懲りもせずに、実家にやってきた迷い猫にも

名前を付けた。

「白と黒だよ」弟が猫の「柄」を言った。

「白と黒、ブラック&ホワイトか」

そしてその猫は、「マイケル」と付けた。

なぜ、いつも、私がネーミングするのか?

 

It isn't just one of your holiday games;
You may think at first I'm as mad as a hatter

                        (T.S.ELIOT)
帽子屋みたいに気が狂ってるな。