現象の奥へ

【詩】「梅」

「梅」

暮ると明くと目かれぬものを梅の花いつの人間(ま)にうつろひぬらむ (紀貫之

われらが「古今」から学ぶは郷愁、
惜しむきもち。
死ぬまで繰り返される
一年の、
その尊さの
飽き。
梅を女とみて。
夜のなかに香しさを
堪能する、
ここはどこでもない、
あなたのうでのなかという
時間。
去ってゆくものがいちばん
うつくしいというそねっと。