現象の奥へ

【詩】「詩を書く権利」

「詩を書く権利」

詩を書く権利は誰にでもある。
それは詩ではないと言われようと。
下手くそと言われようと、
無名のくせにと思われようと、
詩壇(というものがあるとして)が無視しようと、
詩を書く権利は誰にでもある。
絵を描く権利と同じように。
ときに詩集を送ってくれたひとに、わざわざSNS
礼を言ったりしているひとを見かけるが、
それは、個人情報の漏洩ではあるまいかと思う。
そっとメッセージでお礼をいう人は、
あるいは、そのひととの関係を知られたくないのかもしれないが、
個人情報の漏洩よりよほどましだと思う。
ときにポーは、有名な短編『隠された手紙』のなかで、
「詩人と馬鹿とはほんの僅かな差だと思うな」
と書いている。
「たしかに」と思う権利も
誰にでもある。なぜならそれはひとの頭の内部で起こることだからだ。
ことほどさように、
知的障害者保護施設で起こった
悲惨な事件、職員が、
「そこに入所している人々は生きる権利がない」
と、殺人の理由を言ったとき、
ある入所者の女性は、心から
「そんなことはない」と憤った。
あきらかな人権侵害に対して、憤る権利がある
と、その人は知っていた。