現象の奥へ

【詩】「上意討ち3」

「上意討ち3」

右は高輪泉岳寺
四十七士の墓どころ
ひとり、赤穂への報告のため
逃がしたから、実際は、
四十六士。戒名にはすべて「刃」の文字が刻まれている。
赤穂城城主、浅野内匠頭長矩は、殿中で刃を抜いたため、捕らえられ、
駕籠に乗せられ罪人として裏門より江戸城を出る。
いったんは身柄をさる大名の邸に預けられ、
将軍綱吉の裁きを待つこととなった。
即刻赤穂への知らせが飛んだ。
翌年、赤穂城家老大石内蔵助以下、家臣たちは、
浅野の仇を討とうと、浅野を陥れた吉良上野介の首を討ち取る
計画を立てた。すでに知られているように、
茶会で警備が緩んでいる吉良邸に、未明討ち入り吉良の首を取った。
そして「自首」。浅野家の菩提寺である
泉岳寺に集合。将軍の沙汰を待った。
綱吉は、主人の仇を討つとは、あっぱれと、
恩赦に傾いた。それを制止したのは、
荻生徂徠である。
このまま放免してしまえば、民衆のためにならない。
見せしめのため、武士としての正式な切腹をさせるべきだ。
この、中国語と日本語のバイリンガル儒学者
まるでネイティブのように、中国語を操ったという。
浅野内匠頭は、武士として屋敷内ではなく、庭で切腹させられたという。
今の聖路加病院あたりであるという。
右は高輪泉岳寺
はて、泉岳寺が見えぬ。
江戸時代は見えた……かも、しかし、鉄道はなかった。
もし、浅野がかような事態を起こさなかったら、
おれは、昼行灯と呼ばれ、
凡庸な、
地方の城代家老で終わった
ものを。そう、
大石の魂は
思うのであった。のち、その魂について、
柳田国男は、
書いている(うそうそ(笑))。