現象の奥へ

『アメリカン・ユートピア』──Show must go on with corona !(★★★★★)

 『アメリカン・ユートピア』(スパイク・リー監督、2020年、原題『DAVID BYRNE'S AMERICAN UTOPIA』)

 

  遅ればせながら(というのも、卒論が「オフ・オフ・ブロードウェイ」だったにもかかわらず(笑))、15年ほど前に初めてニューヨークに行って、初めてブロードウェイの舞台を観た。それがミュージカル『スウィーニー・トッド』で、役者が全員ひとつの楽器を持って演奏し、歌い踊っていた。ちょうど、この映画のように。ブロードウェイでは、芝居はもちろんのこと、歌、踊り、楽器の演奏はあたりまえのことと見た。しかも、装置はシンプルで、洗練されている。ちょうどこの映画のように。    
 カメラを感じさせないと、経験値の少なそうな(笑)、「映画com」の批評家氏が書いておられたが、実際の舞台を映画にしたというより、スパイク・リーのカメラワークが縦横に走っている。彼はこの映画でなにを言いたかったか──。すなわち、もう「希望の祭典」なる全世界スポーツ大会はオワコン(「終わりのコンテンツ」という意味ですよ、オジーチャン(といっても、この言葉も終わりかけてますが(笑))であるということ。ウイルスとの戦争で人類は負け、時間が逆流した。いやいや、螺旋状に一段階上の同じ位置に。

  ニューヨークにまた行きたいとも思わず、ただ、舞台で呼ばれた、非人間的な死を迎えた人々の名前、直近では、ジョージ・フロイト、だけは覚えておこうと思う。  それにしてもアメリカ人は、コロナで生き延びても、銃社会で死んでしまう。いったいなんてこった! 日本人は、今のところ、「希望のスポーツの祭典」に犠牲を捧げます。 (いったい、どういう映画だったんですか?(笑)、それは、実際に見てください(笑))

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