現象の奥へ

『チア・アップ! 』──老いてますますかっこいいダイアン・キートン・ショー(★★★★★)

『チア・アップ』(ザラ・ヘイズ監督、2019年、原題『POMS』)

「ばあちゃんたちのしわを見るだけの映画でした」というレビューがあったけど、見る前に、わからんかったのかね? どんな映画か。まさか、若き美女が美しい肢体ですばらしいダンスを披露するっていう映画だと思ったのかね? こう書いたレビュアーはいったい、この映画に「何を期待していたのだろうか?」
 ダイアン・キートン、しわしわ。御年74歳だ、しわがない方が不気味だろう(笑)。若き日のライザ・ミネリと踊りを比べてどーする(笑)? ほんまの一般レビュアーやろか?
 てなてな怒りが盛り上がる、ダイアン・キートンさま、すばらしい! 74歳で、これだけ踊れる、白髪混じりのヘアもかっこよく、それによく合う、グレー・ジャケットグレイッシュ・ブラウンのストール。あるいは、インディゴブルーのデニムシャツに、ウォッシュッド・ブルーのジーパン。あちらでは、ばあさんは、カラフルな色柄ものを着るなか、ひとり、グレイッシュ・オリーブや、カーキ、あるいは、オフホワイトのセーターとジーンズで過ごす「年取った女」。自分が癌で余命いくばくもないと知り、「終活」に入って、40年間慣れ親しんだニューヨークの暮らしに終止符を打ち、自ら運転する車に少ない荷物を積んで、カリフォルニアだかのシニア・タウンに移り住む。この街がすばらしい。日本にはこんなところなどない。シニアのための住宅地だが、プール2つ、ゴルフ場2つ、ボーリング場もある。住まいは戸建てで、シニアのためのサービスはいろいろあり、夫婦で住んでいる人もいる。キートン扮するマーサは、「おひとりさま」。静かに余生を送りたいと思っている。シンプルなインテリアの部屋のベッドに入って、分厚い本を広げる……。あー、いいなーと思ってしまった。
 ところが、とんでもないお騒がせ人間のお隣さんがいた……。しかし、このバーサンとは、のち、大親友になる。
 物語の構造は、オッサンたちがストリップしたり、シンクロナイズド・スイミングのチームを作るアレと同じ。それを、バーサンと、チアリーディングに変えただけ、といってもいい。物語というものは、それが物語であるかぎり、だいたい似たような構造を持つものである。それに、どれだけのディテールが詰められるか。Yahoo!レビュアーのなかには、結局このバーサンたちも、アメリカの管理社会下にある。終末医療もちゃんと描いてない……とか、「批判」している人もいた。この人も、どんな映画か、「見る前にわからなかったのかね?」(笑)である。ポスター見たってわかるじゃないか。「そういうテーマの映画ではない」ことぐらい。
 この映画は……そう……ダイアン・キートン・ショーなのである(笑)。彼女の演技、ファッションセンス、知性、ライフスタイルがすきな人だけ見てください……っていう映画なんです。だから、制作総指揮は、ダイアン・キートンなんですぅ〜!!
 確かにばーちゃんたちだけどナ、振付は悪くないし、音楽は超クールだぜ〜♪ オッサンたちがストリップしたり、シンクロナイズド・スイミングするより、陰気くさくなくて、心底カラッとしていて明るいんですぅ〜!! ネット社会を利用したエンディングには泣くよ〜。