現象の奥へ

【昔のレビューをもう一度】『ヤング・アダルト・ニューヨーク』(★★★★★)

『ヤング・アダルト・ニューヨーク』(ノア・バムバック監督、 2014年、原題『WHILE WE'RE YOUNG』)──四十にして惑う(笑)。2016年8月21日 6時08分

●『マリッジ・ストーリー』のノア・バムバック監督の5年前の作品。同じニューヨークを舞台に、カップルのあたふたが描かれるが、本作に比べると、『マリッジ・ストーリー』は成熟が見てとれる。

原題は、『While we're young』(「若いうちに」)。舞台はニューヨークの、おもにブルックリン。『ニューヨーク、眺めのいい部屋売ります』の、ダイアン・キートンモーガン・フリーマンの夫婦の20年前のような夫婦が、ナオミ・ワッツと、ベン・スティラーの夫婦である。彼らは、20年後には、熟成されて、いい味の夫婦になるのだが、今は、40代、若さの片鱗が彼らを惑わせる。その惑いを描いた映画だ。そういう意味では、「反論語的」映画と言える(笑)。
 その40代の夫婦が、20代の夫婦と知り合い、「家族ぐるみ」でつきあい始めるが、その20代は、彼らの20年前というわけではない。おそらくこのカップルは、20年後には別れてしまっているかもしれない。そういう調子のいいカップル。成功のためならなんでもする、ということが、やがてわかってくる。
 若いカップルの男の方、キアヌ・リーブスに似ているが、なんか顔相の悪い、すきになれない顔だと思ったら、こないだの『スター・ウォーズ』で、カイロ・レンになったやつだった(笑)。とにかく、この男が、主人公のスティラーと同じ、ドキュメンタリー作家で、スティラーの教えるアート・スクールに、アマンダ・セイフリッドの若妻とともに聴講に来て、積極的にスティラーに近づいてくる。アート・スクールで講師をしているものの、スティラーは、8年も新作を作ってない。一方、彼の妻のナオミ・ワッツの父は、すでに功成り名遂げたドキュメンタリー作家で、ナオミは、そのプロデューサーをしている。
 結局、カイロ・レンは、もとい、アダム・ドライバーは、ナオミの父を目標にしていたのであり、そのやり方は、ドキュメンタリーながら、「やらせ」であった。ベンは、そこのところを譲れず、孤立していく。
 一方、ベン夫妻と年相応の友人たちは、遅ればせの「子育て」を始め、赤ちゃんイベントなどに参加して、それなりに人生を謳歌している。ナオミは何度か流産して、もう苦しみたくないと思っている──。
 苦い、人生は苦い。しかし、世の中には愛し合っている夫婦もいて、愛が確かなら、二人で成長できる。監督、脚本のノア・バームバックは、ポスト・ウディ・アレンと言われているそうだが、どうでしょー? ちょっと「ガチ」すぎませんか? 「ガチ」って言葉、こういうふうに使うのかどうか、わかりませんが(笑)。