現象の奥へ

【詩】「イリアス」

イリアス

 

歌ってくれムーサたちよ、

てな感じで出かけた戦争は、美女を取り返す目的ではなくて、

あらゆる戦争と同じ、略奪だった。

牛を連れ葡萄酒を持ち、

戦地に下りたっても、まずは、神に焼き肉と葡萄酒を捧げ、

兵士たちも喰らうのだった。ああ、なんて、うるわしい

海の色。ホメロスが、葡萄酒色の海と表現するとき、

吉田健一も、『葡萄酒の色』という訳詩集を出すのだった。

あれから十年。十年もの間、戦地にいて、戦っていた。

悠長だな〜、大昔の戦争は。

こちら、「同じ目的」で、東条英機らは、中国へ石油調達。

先の戦争で死んだ民のため、引っ込むわけにはいかず、

さらなる犠牲。ほんまに、ぬあにやってんだか。

だから、歌ってくれ、ムーサたちよ。