現象の奥へ

【DVD】『ブリット』(ピーター・イエーツ監督)

【DVD】『ブリット』(ピーター・イエーツ監督、1968年)

スピルバーグがリメイク(というのか?)するというので、さっそくAmazonでDVDを買った。帰省に持ち込んで鑑賞……。いろいろ著名な出演者(ロバート・ボーンはかぎりなく悪いし、ジャクリーヌ・ビセットは、かぎりなく美しい。もうあんな美しい女優はどこを探してもいないだろう)のなかで、スティーブ・マクイーンは、変わった顔をしている。これほど金髪と青い眼が際立っている役者はいない。それがそのまま、クールな雰囲気を醸し出している。そして、ストーリーというよりも、シチュエーションのカメラワークが超センスいい。さすがピーター・イエーツ監督。アイリッシュたちの時代だった。静かにハイセンスにしてエンタメ。そういうものが注目される時代となるかも。鳴り物入りの「前衛」はオワタ、オワタ。本日は移動日だったので、疲れが出て、実家で寝落ち(笑)。

 




 

【詩】「近松」

近松

十六世紀の最後の三十年間歌舞伎は最高潮となり、
その中心は、豊臣秀吉だった。
派手な衣装がすきだった、微賎の出ゆえ。
歌舞伎の源流は、自称出雲大社の巫女、女芸人阿国
大した芸じゃなかったが、もともとは盆踊りだった踊りを、大胆に踊ってみせて大喝采
古代ローマの支配者たちは民衆にパンとサーカスを与えたが、
江戸幕府は歌舞伎を与え、反抗の芽を摘んだ。
しばし歌舞伎も浄瑠璃も栄えたが、それは下等な芸当だった。
もともとは越前福井に生まれ育った近松は、武士であった父に従い京に出た。
公卿社会の庇護を受け、やがて、人形浄瑠璃の脚本を書くようになる。
人形でなければできない見せ場、たとえば、
舞台の真ん中で首を落としてみせる。
ひとよんで、
日本のシェークスピアとなりにけり。

 

【詩】「右側に気をつけろ」

「右側に気をつけろ(SOIGNE TA DROITE)」

物語を詩にして完成させ、その日の朗読会に間に合うように届ければ罪はゆるされる。
罪? なんの罪?
物語? なんの物語?
そして馬鹿殿は、詩を作り始めるのだった。
韻も踏まない十四行だけある詩は
ソネットと呼ばない。
日本人はとにかく韻に無頓着というより無知。
西洋の詩ならごまかせても、
漢詩の規則はもっと厳しいから誤魔化せまい。
がったん、ごっとん、窓際に手錠で留められて、電車がいく。
エラース! エラース! エラース!
映像は言葉であり、言葉は映像である。
映像は哲学であり、哲学は映像である。
そしてエリオットは朗読する、りっぱに韻を踏んだ蛙の王の物語を、やる気なさそうな小声で、





 

【詩】「隠喩」

「隠喩」

世の中にいちばん多いもの、
それは隠喩であろう。
隠喩と隠喩をかければ隠喩になる。
とらえ難く悲しく、
生涯使いおおせぬ
隠喩のために泣く
清少納言
星は、すばる。
超新星
10,000×9,998×……
の隠喩を使い尽くして
輝く。
「単語はすべて死せる隠喩である」
ルゴネスは言ったと、ボルヘスは書いている。

 

【詩】「詩が詩に横切られる」

「詩が詩に横切られる」

いま、1888年米国生まれの英国人、
Thomas Stearns Eliotの「荒地」のなかのマダムが歩いている部屋のウィンドウが見えるが、そこを、
1906年アイルランド生まれのフランス人になってしまった
Samuel Beckettの「ホロスコープ」という詩が横切っていく。
これはいかなる事態か。
ときとして混じり合う、
プロテスタントからイギリス国教へ、
また、カトリックの奥深く
入り込んだベケットの宗教的風景。
それらが、絡み合って、
わたしの、母方祖母禅宗天理教の仏壇内に神棚の、
そしてわたしの父方神道新興宗教霊友会
そういう入り乱れた宗派景色が、
まさに詩によって、ご両人の詩によって、見える明度。


 

【詩】「ブレイク」

「ブレイク」

教育は、われわれがほんとうに感じたり欲したり、
興味を持ったりすることを、隠す。
有害なのは、そうして得られた知識ではなく、
それがわれわれに強いる
画一的なものの考え方である。
と、T.S.エリオットは、「ブレイク」という論文のなかで書いている。
エリオットの描き出すブレイクはまるで、ランボーを演じたディカプリオのようである。
偉大な詩人はみな、隠さない。
おのれがほんとうに感じるものを。
先達の作品のなかにそれを探す以外の、詩の勉強法があるだろうか?
妙な理論をいくら探っても、そこにはなにもない。
ブレイクの幸福は、芸術家ではなく、職人であったこと。
仕事を通して、成熟とは何かを知っていく。
そして、真にほしいものに到達する。

 

「愛しているのか、恨んでいるのか」

「愛しているのか、恨んでいるのか」

ときどき載せられる書き込みを、ひそかに覗いている。
男を恨んでいるような、でも愛しているような。
ほんとうに、あの男とあの女は、やってしまったのか。
女は男をなじっている。
ほんとに、知り合ってまもなくホテルに行ってしまったのか。
男が誘ったとか。
男は60代後半、女は50代前半?結構、女が若いじゃん。
覗き見者が感想をいえば、男は相当な遊び人。
そういうのに、ひっかかってしまった女。
ええと、その男ですけどね、私も「友だち」でしたが、
頭でっかちで「有名人」と思い込んでいる人々に媚びたりしてるので、
ブロックしまちた、Nothin personal だけど。
悪いジジイだなー。私も本名書いたろか(爆)。
T.S.エリオットさん、これは詩ですかね?