現象の奥へ

Entries from 2020-01-01 to 1 month

『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密 』──本格ミステリーを楽しもう!(★★★★★)

『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密 』(ライアン・ジョンソン監督、2019年、原題『KNIVES OUT』) ひさびさ本格ミステリーである。従って、名探偵の謎解きを楽しむべし。アクションや、誰か一人が目立ってかっこよく、ということを期待してはいけな…

【詩】「ヤマシタハルヨ(そのヒトだれ?(笑))の『ドン・キホーテ』」

「ヤマシタハルヨ(そのヒトだれ?(笑))の『ドン・キホーテ』」 さあ、行ってみようか、きみとぼく、 お暇なかたがた、夕暮れが空に、じゃなく、空に夕暮れが撒かれるとき、テーブルの上の麻酔をかけられた患者みたいに、(T.S.エリオットの『プルフ…

『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』──意外にも原作に忠実(笑)(★★★★★)

『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』(テリー・ギリアム監督、2018年、原題『THE MAN WHO KILLED DON QUIXOTE 』) セルバンテスの『ドン・キホーテ』は、前編が1605年、後編が1615年に出版され、前編は部分に分かれているが後編は分かれてなくて、作家自…

加藤典洋著 『戦後入門』──文芸評論家の理想論(★)

加藤典洋著 『戦後入門』(ちくま新書) 新書ながら635ページ。書き下ろし。2015年刊。なんでこんな本を読んだかといえば、池田清彦『ほんとうのことを言ってはいけない』(角川新書、2020年1月刊)で、50年後にも読みつがれる本として推薦されていたからだ…

『ジョジョ・ラビット』──監督の教養を疑う(★)

『ジョジョ・ラビット』(タイカ・ワイティティ監督、2019年、原作『JOJO RABBIT』) ナチスが殺戮したのは、敵国の敵もあろうが、おもに「内部」の「異分子」(ユダヤ人のほか少数民族、同性愛者など)を、まるで殺虫剤で害虫(事実、このイメージがヒトラ…

『リチャード・ジュエル』──映画はなにを描くべきか(★★★★★)

『リチャード・ジュエル』(クリント・イーストウッド監督、2019年、原題『RICHARD JEWELL』) 映画はなにを描くべきか。もちろん、「なんでも」監督の好きなものを描けばいい。しかし、やすやすと人を殺してしまうような映画に、あまりにも感情移入してはい…

【詩】「ボルヘスにささぐ」

「ボルヘスにささぐ」 美から身を護るべく避けて通る道に雪が降りくれば隠された花となってひとの心を集めてゆく山、森、里、そして脳裏。本を作ろうとして紙を集めて墨を擦ればことばは消えてただ凍る水のあるのみ 大空の月のひかりに清ければ影見し水ぞま…

『パラサイト 半地下の家族 』──『オールドボーイ』の域に達していない(★★)

『パラサイト 半地下の家族 』(ポン・ジュノ 監督、2019年、原題『PARASITE』) 2004年のカンヌでグランプリを取って、韓国映画の底力を見せつけた『オールドボーイ』(パク・チャヌク監督、2003年)のレベルの高さとどんでん返しには圧倒されたが、あれ以来…

『フォードvsフェラーリ 』──二人の最高の俳優をとくとご賞味(★★★★★)

『フォードvsフェラーリ 』(ジェームズ・マンゴールド監督、2019年、原題『FORD V FERRARI/LE MANS '66』) 本作は、車のブランドのどちらがすごいとか、そういうハナシではなく、勝ち目のないレースに勝ってバンザイの物語でもない。車を愛しすぎているピ…

『マザーレス・ブルックリン 』──ノートンの知性全開(★★★★★)

『マザーレス・ブルックリン』(エドワード・ノートン監督・脚本、2019年、原題『MOTHERLESS BROOKLYN』 Motherlessという意味を、深く知ると泣けてくる──。 主人公のライオネル(エドワード・ノートン)は、6歳の時母と死に別れ、ブルックリンのカトリック…

『ロング・ショット 僕と彼女のありえない恋 』──かませ〜いい女〜♪(★★★★★)

『ロング・ショット 僕と彼女のありえない恋 』( ジョナサン・レヴィン監督、2019年、原題『LONG SHOT』) 絶世の美女の国務長官と、失職したばかりのジャーナリストの恋。いわば「身分ちがいの恋」と言ってしまっていいのか? この二人、かつては、ベビー…

謹賀新年

謹賀新年。 この写真は、世界三大聖地のひとつ、北スペイン、サンチャゴの礼拝堂です。もう6年前になりますか。昨年末に制作した新詩集『死にゆく者への祈り』の表紙に使いました。今年は、小説にシフトし、ちょっと腰を落ち着けて修行できたらと思います。…