現象の奥へ

【詩】「新型コロナ・ウイルス」

「新型コロナ・ウイルス」


細胞の突起の形が王冠に似ていたから、スペイン語からそう名づけられた。

昔から存在していたが、「新型」と呼ばれたのはすでに変異していたから。

かといって、生物ではない。

まるで意志があるかのように動く。

しかしきみだって、五月の花は愛するだろう。

きみに教えてあげよう、あのひとは死んだ。

一度だけ会ったことのある人、会って食事をした。

美、知性、地位、すべてを持っていたひと。

ネットで探せば出ている死亡記事。

結婚した様子はない。

詳しい死因はわからない。

きみが関係していたのか、あるいは、べつのウイルスか。

ここに書き留めることによって、あのひとの魂を保存しよう。

ねえ、新型クン。