現象の奥へ

「ジアコモ・レオパルディがどんな詩人か、『春の雪』のなかでフランス人に知らしめたのは、三島由紀夫である」

「ジアコモ・レオパルディがどんな詩人か、『春の雪』のなかでフランス人に知らしめたのは、三島由紀夫である」

Le monde n'est que fange.

「そして世界は泥である」と、ベケットは、プルースト論のエピグラムとして、
レオパルデイの詩の一行を掲げた。
この、À SOI-MÈME(彼自身に)と題された詩のなかの一行は、
「邦訳」ではそう記されていた。

上に掲げたレオパルディの一行は、仏訳である。
そのまま「ニュアンス」を取り込んで日本語に訳してみれば、

世界は泥でしかない。

となる。原語のイタリア語では、

e fango è il mondo.

どうせ世界は泥、

というニュアンス。ニュアンスを考慮せずとも、
「泥」はそこにあり、
ベケットをレオパルディに結びつけ、三島の世界を示す。