現象の奥へ

「秋」

「秋」

日本では、「詩」といえば、明治時代まで、漢詩のことであった。
詩人の方々がよく口にする「現代詩」というのは、出版社が創ったものである。
そんな形式、ジャンルが通用するのは日本だけである。
今信じられている「詩」は「近代詩」のことで、イギリスからフランスを通過して輸入された。
それらに詳しい人々が、大家として尊重されている。
それが日本の詩の世界である。
よく研究しもしないで、信じ込んだことよ。
日本ではそういう人々のことを詩人と自称、他称してきている。
秋来ぬと目にはさやかに
見えねども風の音にぞおどかれぬる
たかが風に驚くこの大げさな歌には、漢詩=詩が混じっている。
それは、その驚きの動作、さやか、はっきりと。
万葉なら、「わだ背子がかざしの萩に置く露を清(さや)かに見よと月は照るらし」