現象の奥へ

【本】叢書・同時代の詩Ⅳ「田村隆一『死語』」(昭和五十一年、河出書房新社)──なんだ、これ?

 たまに田村隆一を信望している人を見かけるが、はっきりいって、この人の書いているものは詩ではない。ではなんなのか? ただのメモというか走り書きというか──。ここには、清水哲男の、おビンボーな(笑)日常もなければ、教養も機知もなく、ただの酔っ払いのメモ以下のものである。いつからブランドのような詩人になったのか? 誰があがめたてたのか? これなら、ただの酔っ払いのメモの方がなにかしらの「実」がある。ここには実のようなものはなにもない。思想も思考も紋切り型以下。題名は『死語』であるが、死語以下である(笑)。家にこれがあるってことは、二十代前半の私は、なにかあると思って買っていたのかな〜?

 ただミステリーの翻訳とか、そういうものは、それなりの仕事ではないか? 詩集中に大幅引用(ここまで引用したら、その引用もとの詩人の作品ではないか?盗作じゃん(笑))されている鮎川信夫も、推理小説の翻訳ではすぐれていると思う。こういう人々が、多少英語ができることをいいことに、オーデンとかを、表面パクっていたのかもしれない。

 余談ではあるが、友人の編集者は、この人の葬儀の世話して、「他人のことで時間を取られるのはアタマに来る!」と怒っていた。かなり懇意にしてもらっていたようだが、全然うらやましくないし〜♪

 

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【詩】「猫に小判」

 
ありゃ〜、なにこれ?
薄っぺらくて(と、ためつすがめつ)
(突然噛んでみる)をいをい!
金メダルぢやないだわ!
ありゃ! 歯形がついちまった。
どーしよー?
それ、金メダルより純金の濃度多いんだわ、たぶん。
そうだ! 言ってあげなくちゃいけない。
野生動物を家畜化した時から、
ウイルスがはびこるようになったんよ。だから、
豚もカンケイあり。
ってことをね。
だから、よおく火を通さなくちゃいけない。
食われるために生まれ、食われるために生きてるって、
どんな気持ち?
生活協同組合も、牛肉になる
めんこい子牛の写真なんか載せないでくださいね。その
矛盾の間隙に
ウイルスは生まれる。
(これって、現代詩ですか? いいえ。その証拠は?
臭いイデオロギーに染まってないからです)
しかして猫は
小判の上にうんこをするのであった。
 

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タリバン政権に挑戦する女性たち

タリバン政権へ挑戦する女性たち。カブールでは何十人もの女性たちが、働く権利と新政府へのポストを求めてデモを行った。(『クーリエ・アンテルナショナル』)

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私見タリバン政権が貧者を助け、西欧VS.東洋の図式を持ち出す人々がいるが、それはあまりに古い「イデオロギー」である(笑)。

www.courrierinternational.com

 

「Giuseppe Ungaretti(ジュゼッペ・ウンガレッティ)」

「Giuseppe Ungaretti(ジュゼッペ・ウンガレッティ)」



アフリカ生まれのイタリア人

そして

イタリア最大の詩人

二十四才の時、アレキサンドリアから船に乗り

遠く故国をかすめ、パリへ着いた

ソルボンヌで出会ったのは

ベルクソン、そして

親友の自殺

Si chiamava

Moammed Sceab

(モハメド・シュアブという)

E forse io solo

so ancora

che visse

(そしてたぶん私ひとりが

まだ知っている

彼が生きたことを)

 

もっと深く死ぬために

 

come le allodole assetate

sul miraggio

(蜃気楼を渇望する

ひばりたちのように)





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(イタリア語部分は、ウンガレッティの詩句より引用)

 

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【詩】「無がこぼれる」

「無がこぼれる」  

摘まれた花と贈られた花の あいだに、
言い表しがたい無
と書いたウンガレッティ を思い出す時が来た。
ついでに マラルメも。
なぜなら無が わたしの手の中からこぼれ始めている。



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