現象の奥へ

Entries from 2020-08-01 to 1 month

【訳詩】「形の共有」(『激高と神秘』)ルネ・シャール

「形の共有」(『激高と神秘』)ルネ・シャール 成熟の年齢に達して、私は生と死のはざまの壁によりかかる梯子が高く延び広がり、その梯子がますますむき出しに、特異な摘出の力、それは夢であるが、それに取り囲まれるのを見た。それらの格子は、成長したの…

【Amazonレビュー】『現代詩手帖2020年 9月号』──「現代詩」はオワコン

『現代詩手帖2020年 9月号』( 2020年8月28日、思潮社刊) ●Amazonレビュー書いたら、すぐに「通った」(笑) 高見順賞をはじめ、さまざまな賞を「牛耳って、この会社が思う「詩壇ヒエラルキー」を形成していたが、高見順賞は終了し、三好達治賞(大阪府が経…

【エッセイ】「高見順」

「高見順」 ●高見順賞という詩のビッグな賞が終了した。大阪市がやっていた三好達治賞も終わった。わりあい華やかだった、資生堂提供の、花椿賞もとうに終わっていて、秋は、毎年詩集発刊のラッシュとなるのだが、さて、今後どうでしょうかね? もともと「詩…

【エッセイ】「『楢山節考』考」

「『楢山節考』考」 ●2018年8月28日に、「詩」として書いていたのがFBの「おせっかい」シリーズ(私が命名(笑))で回ってきた。読み返してみると、悪くないエッセイであるが、「詩」とジャンル分けしてあって愕然とした。これが詩ぃ〜?(爆) **** た…

【エッセイ】「記憶をたどれば……」

「記憶をたどれば……」 最近、今後の世界に関して新しい見方を提案している若い著者を見かけるので、そのなかの一人、落合陽一の著書を買ってみたのだが、いちばん新しいのはろくに開きもせずに、ブックオフ・オンラインに売ってしまって(笑、まー、読む意欲…

【本】『働き方5.0: これからの世界をつくる仲間たちへ』──コンピュータ文化もまたイデオロギー(★★)

『働き方5.0: これからの世界をつくる仲間たちへ』(落合 陽一著、2020年6月3日、小学館新書) 本書で言及されている、「意識高い系」の人というのは、確かに、ネットで、それも、Facebookで、多量に見かけます。しかしこの著者の「意識高い」という、言葉の使…

【昔のレビューをもう一度】『ブラック・スキャンダル』──洗練された21世紀の犯罪(暴露)映画(★★★★★)

『ブラック・スキャンダル』(スコット・クーパー監督、 2015年、原題『BLACK MASS』) 2016年2月1日 7時43分 共感できる人物はひとりも出ない。70年代、FBI最大のスキャンダルとされる、アイルランド・マフィアがからんだ「実話」であるが、いやな感じは少…

『グッバイ、リチャード!』(ウェイン・ロバーツ監督、2018年、原題『THE PROFESSOR/RICHARD SAYS GOODBYE』) 肺がんで、治療すれば一年、もしくは一年半、と、医者が言い、文学の教授のデップは、「治療しなければ?」と問う。医者は答える。「半年」。が…

【詩】「四柱」

「四柱」 こんな夢をみた。 暗がりで木があって時代はいつなのか主体は誰なのかわからない。ただそれは私にとって意外な感じでその意外さは、どちらかといえば心地よいものだった。 褒美として死が与えられる。 女性同性愛者はそれをべつの言葉で置き換え自…

弘田三枝子の「マック・ザ・ナイフ」

(2014年8月18日にFacebookに書いていた) 『マック・ザ・ナイフ』聴き比べミコちゃんの『マック・ザ・ナイフ』すばらしー! ブレヒトの劇『三文オペラ』の劇中歌から生まれたポピュラーソング、『Mac the knife』の、以下、ワタシ的ベスト8。この8人を、iP…

『ポルトガル、夏の終わり 』──うちの民宿にはいろいろな人が泊まりました(★)

『ポルトガル、夏の終わり』(アイラ・サックス監督、2019年、原題『FRANKIE』) フランスの女性は、生涯「女」をやめることができない。ゆえに、女優も、「女」であり続ける役しかできないし、フランス系の映画は、「女」以外の役がない。たとえば、『ビリ…

【詩】「むかしむかし、宇野重吉という役者がいました」

「むかしむかし、宇野重吉という役者がいました」 そう。「むかしむかし」になってしまう。それほど、昔でもないのに。ほんの、五十年程度前?NHKドラマの題名は忘れた時代劇に、どうせ、「忠臣蔵」とか、あんなのが題材だったか。役柄名だけ、「クモのジ…

『ジョーンの秘密 』──演劇界の大御所ナンが描く劇的なる青春(★★★★★)

『RED JOAN』( トレヴァー・ナン監督、2018年、原題『Red Joan』) ドキュメンタリーと銘打たないかぎり、映画というのは、「事実をもとにし」ようが、「事実にインスパイア」されようが、すべて創作と見るべきであり、事実からいかに離れたか、が、作…

【詩】「鴉(The Raven)」

「鴉(The Raven)」 二年前愛犬が死んだ時、京都の寺へ彼女の生まれ変わりに出会えることを祈願しに出かけたその留守を狙って(夫は外国へ行っていたから、完全に無人だった)、ベランダのシンクの棚に置いた、使い古して薄くなった石鹸を、石鹸箱に大量に…

【詩】「UNIXあるいは実行ファイル」

「UNIXあるいは実行ファイル」 UNIXは私生活をさらけ出してそれが詩になるかという問には答えない。 さらにその「女」が老いぼれてまだそんな芸で受けを狙っているという問題にも関与しない。 その「オバハン」がTwitterで私をブロックしているというかなり…

【詩】「古地図あるいは心象」

「古地図あるいは心象」 この夜、中世のひとに話しかけていた すでに滅びてしまった帝国に擁護されていた修道院 で筆写された書物の 内容よりは素材の ことが話題になった遠い宇宙のそう、 六百年は遅れていたかしら 記憶とか夢は またべつの惑星のランガー…

『ブレスレット 鏡の中の私 』──どういうつもりでこんな映画を作ったのか?(★)

『ブレスレット 鏡の中の私 』(ステファヌ・ドゥムースティエ監督、2019年、原題『LA FILLE AU BRACELET/THE GIRL WITH A BRACELET』) フランス語が聞きたくなって、この映画を選んだが、ほとんどが裁判シーンの低予算お手軽映画だった。確かに扱っている…

『ベージュ 』──ついぞ「惨めさ」に縁のなかった詩人(★★★★)

『ベージュ』(谷川俊太郎著、 2020/7/30刊、新潮社) 「大御所」であるが、この詩集は、「私はそういうものには関係ないですし、関係ないように生きてきました」と言っているような「装丁」である。31編の詩を含んでいるが、どちらかと言えば「薄くて小さい…

【Bookレビュー】『新型コロナウイルスを制圧する』──目次に期待して読むと肩透かしを食う(★★)

『新型ウイルスを制圧する』(河岡義裕 語り、河合香織 聞き手)(2020年7月30日、文藝春秋刊) この本は、山中伸弥氏のサイトで紹介されていたので信頼がおけると思って買ってみたが、「東京大学医科学研究所ウイルス感染分野教授」の河岡義裕氏へのイン…

【詩】「眠りの影のなかの」

「眠りの影のなかの」 世の中に ベージュにまさる色はないような気がしてきた土曜日の午後 妥協して カーキのガーゼ織りに触るのだが やはりこころのなかは 依然ベージュを夢見ている そんな「コロナ元年」のある日 祖父と思い込んでいた老人に 報告せねばな…