現象の奥へ

【詩】「ラカン」

「ラカン」想像界、象徴界、抑圧、浸透、自己主張、作り話、反復脅迫、意味表現、連鎖、中心から離れた場所──わかったふりしてるあなた。やさしくみえる詩より難しくみえる詩の方がすきなあなた。Und wenn es uns glückt,首尾が上々でジョブズみたいに、自分…

【詩】「日本」

「日本」あいもかわらず政府はきれいごとを並べ、事柄をごり押ししていく。岸田の何かの文章を読んでいるような物言いはどうだ?バイデンの弱々しい老人特有の笑いはどうだ?NHKには、いったい、気象予報士は何百人いる?気象予報士の給与を発表しろ。政府に…

【詩】「被後見人が後見人になりたがる」

【詩】「被後見人が後見人になりたがる」ハントケの無言劇。高校生の時知った。その後、ハントケはノーベル賞を取った。いろいろの問題が取り沙汰された。サッカーを見るたびに、ハントケを思い出す。「不安──ペナルティキックを前にしたゴールキーパーの」…

【けふの格言20230820】

【けふの格言】Old soldiers never die; they only fade away.〔老兵は死なず、ただ消え去るのみ)(マッカーサーがトルーマン大統領によって、朝鮮戦争時、国連軍総司令官を解任された時、第一次世界大戦時に流行った流行歌を引用した。)

【詩】「ト書き」

「ト書き」シェークスピアの作品にはト書きがほとんどない。登場と退場があるだけだ。それというのも、エリザベス朝の舞台には照明が松明のあかりしかなく、薄暗かったから、こまごました装置はあってもしょうがなかった。少年が女性を演じ、それは、歌舞伎…

【吉田健一のことば20230818】

【吉田健一のことば20230818】 今日の日本に詩人と自称するものが一万人前後もいて、その中で詩であるものを一行書ける人間が二人いるか、三人いるか解らない〔吉田健一『東西文学論日本の現代文学』)

【詩】「お盆のエリオット」

「お盆のエリオット」テムズに浮かぶは、きわめて日本的な郷愁。サンドイッチの包み紙やオーフィリアが抱えていたオダマキではない。エリザベス朝のフローラよ英国人の死を飾れ。ナスの馬や蓮の葉、きびがら、祖母おさと婆さんの恋が最初の夫の位牌とともに…

【詩】「地中海」

【詩】「地中海」夏の終わり南仏で、初めて地中海に足を漬けた飛び上がるほど冷たかった。地中海の子ヴァレリーよ、きみはダヴィンチの方法を書いた女神がやってきて飛び散るしぶきのように笑った。ホメロスはまだ若者でパピルスに歴史が描かれるなんて思い…

【十句】

【十句】涼風が記憶を運ぶお盆かな二十三世紀にお盆ありやカラス静けさや不安をあおる昼下がり影ゆれて光もゆれる位牌かなその昔鮎といふ魚あり郷愁も風化枯れし昼顔電話すれば友は睡眠薬を処方されてをり真夏ゴキブリのように蝉が死んでをりベランダ耳鳴り…

【詩】「失うということ」

「失うということ」結局、死ぬまで、失うということを知らないひとはたくさんいる。知らないまま死んでいく。失う。すべてを失う。それがどういう感じなのか、ウンガレッティは「すべてを失って」という詩のなかで書いている。人生が叫べぬ声の岩となって喉…

【詩】「燃えあがる薔薇」

「燃えあがる薔薇」あなたの夢は倒叙形式でやってくる結末ではなくはじまりを見るために

『ユリイカ』2013年8月号特集小田久郎

『ユリイカ』2023年8月号特集小田久郎「さきほど」(っていつよ?(笑))、亡くなられた、小田久郎、思潮社初代社長にして『現代詩手帖』初代編集長の特集。さすが、「敵に塩を送るか?」的な行為にも見えたが、買おうと思ってAmazonに行ったが、書き手のメ…

天正十年愛宕百韻

【天正十年愛宕百韻】場所は山城国愛宕山西之坊威徳院。表向きは毛利征伐の戦勝祈願、実は信長を本能寺で破るための明智光秀の祈願をひそかにこめたもの。連衆光秀ほか八名。初表「ときは今天(あま)が下しる五月哉」 光秀NHK大河『どうする家康』では、ま…

【詩】「詩を書く権利」

「詩を書く権利」詩を書く権利は誰にでもある。それは詩ではないと言われようと。下手くそと言われようと、無名のくせにと思われようと、詩壇(というものがあるとして)が無視しようと、詩を書く権利は誰にでもある。絵を描く権利と同じように。ときに詩集…

それをお金で買いますか?

【それをお金で買いますか】マイケル・サンデルの本書が出て、十数年になる。いまや、「刑務所独房の格上げ」や、「民間軍事会社の一員となり」それなりの給与、一月250ドル(十年前)まで、お金で買えるようになっている。その「商品」が、ロシアでは姿を現…

本能寺の変

【本能寺の変】信長がNHKのテレビドラマのように、そこで明智光秀の送った殺し屋に殺されたという史実があるわけではない。ただフロイスの『日本史』には、本能寺は焼け、そこに信長は泊まっていたようだが、遺体は見つからず、骨ひとつ発見されなかったとあ…

【詩】「ほととぎす」

「ほととぎす」ほとゝぎす栗の花ちるてらてら日 李千依然、鳥の姿はつかめずキリアン・マーフィーはきれいな顔を歪ませてオッペンハイマーの姿の陰。砂漠、実験、あれがああなれば……。私は小学生で図書館で『人類の夢原子力』という本を読んでいた。そこに書…

【詩】「かきつばた」

「かきつばた」捲あぐる簾のさきやかきつばた 如行孤独は守られねばならぬ。夢は他人の夢に混じらねばならぬ。シリア人の乗った船は汚水を含んでいなければならぬ。古句にイタリアは混じらねばならぬ。原書『資本論』に誤植がなければならぬ。ヘブライ人は亡…

【詩】「昼顔」

「昼顔」 昼顔や魚荷過ぎたる浜の道 桃妖 なまぐさき郷愁もある炎天下 やがて咲きたる青い花昼顔科なれど 名前はアメリカンブルー 名前に似ず弱々しき茎と葉 あの日から何十億年経ちました。 海の水は涸れ、 人類はいるのかいないのか。 ただ記憶として牡丹…

【詩】「クロード・レヴィ・ストロースに捧ぐ」

「クロード・レヴィ・ストロースに捧ぐ」「問題にしたり、論争したりすることが新しいのではない。新しさは文学の世界に最も古くからあるものなのである」(吉田健一)エリオットも同じような趣旨のことを言っている。おそらく、オクタビオ・パスも。だから…

【今更ながらの劇評】「緒形拳と串田和美のゴドーを待ちながら」

【今更ながらの劇評】「緒形拳と串田和美のゴドーを待ちながら」串田和美演出、緒形拳と串田和美の『ゴドーを待ちながら』が、福岡の「西鉄ホール」で上演された。そら、期待して観に行ったワ。しかし、ぜーんぜん、おもしろくなかった。西鉄ホールはおそら…

【詩】「明日は帰ろう羅生門」

「明日は帰ろう羅生門」激しい雨に降り込められて、頬のニキビを押さえつつ下人は、自分がディカプリオだった頃を思い出す。都大路は荒れ果てて、人心は狂い、同じレオナルドでも、ダ・ヴィンチ写生用の死体がいるので、死体のメッカ、ここ羅生門の二階まで…

【詩】「女の一生」

「女の一生」pasa gune cholos estin, echei d'agathas duo horas,ten mian en thalammo, ten mian en thanato.小林秀雄は杉村春子が嫌いだった。体は貧相は顔は……なんであんな女が舞台でいい女を演じるのか?!二代目杉村を継ぐはずだった太地喜和子だって…

『観光客の哲学 増補版』(2023年6月15日、ゲンロン刊)東浩紀著

『観光客の哲学 増補版』(2023年6月15日、ゲンロン刊)東浩紀著 著者のデビュー作『存在論的、郵便的』を期待を持って読んだが、結局、新しいエクリチュールが展開されているわけではなく、「学術論文的」であった。著者がどんなに「ゆるく」「テキトー」に…

【詩】「源氏物語─The sonnets」9

「源氏物語─The sonnets」9 9「葵(あふひ)、あるいはプリゴジン」 そのむかし、涙じゃないのよ浮気な雨にちょっぴりこの頬濡らしただけよ、 と緑川アコ、あるいは竹越ひろ子なる歌手が歌った、「カスバの女」なる流行歌あり。 そのカスバこそ、プリゴジン…

【詩】「源氏物語─The sonnets」8

「源氏物語─The sonnets」8 8「花宴(はなのえん)、あるいは、扇を交換する」 おほかたに花のすがたを見ましかば露も心のおかれましやは いかにこころは形成されるのか? それはひとの肉体とは平行しておらず、 それをベルグソンは長いこと研究した。 そん…

【詩】「葡萄酒色の海」

「葡萄酒色の海」名前はオデュッセウスだったかどうか、忘れた。しかし女神たちよ歌ってくれこの葡萄酒色の海で。これから世界一の美女、ヘレナを奪回するために、われらはトロイアという国に向かうヘレナファン同盟。もちろん妻子ある男もいる。その名が、…

【詩】「エリオットのゲロンチョン」

「エリオットのゲロンチョン」エリオットに「ゲロンチョン」という詩作品がある。ずいぶんおもしろい響きの作品だが、れっきとしたドイツ語だったかな〜の単語で、老人の意味だったと思う。と思う、いうのは私も老人でいろいろなことを忘れているからだ。サ…

【詩】「Voyage au bout de la nuit(夜の果てへの旅)」

「Voyage au bout de la nuit(夜の果てへの旅)」Ça débuté comme ça.それはこんなふうに始まった。夜はいつから始まったのか、皆目見当がつかなかった。ただ夜のなかを漂うように歩いていた。はじめ、それは郷愁を誘う音楽のようであり、上から見下ろす、…

【詩】「源氏物語─The sonnets」7

『源氏物語─The sonnets』7 7「紅葉賀(もみぢのが)、あるいは、デニーロとパチーノはパパ友、だからなに?」 金があって有名なら若くてきれいな女はいくらもつく こどもぐらいなんぼでもつくれるけど日本はなぜか少子化対策 いっそのことインドなどの人口…