現象の奥へ

Entries from 2020-01-01 to 1 year

妹、小林貴子個展「風景の境目」

いよいよ本日10月1日より6日まで、愛知県豊橋市のギャラリーNAKAで、妹小林貴子の個展「風景の境目」 を開催いたします。どうぞよろしくお願いいたします。 http://www006.upp.so-net.ne.jp/soshite/index.html

【詩】「張込み」

「張込み」 大岡昇平は、歴史を歪めていると、松本清張を批判している。なるほど、それは、正当な立場と言える。だが、クリスマスイヴの凍える街で足踏みしながらカップコーヒーを啜って仕事中の、その雄々しい惨めさ、あるいは、惨めなプライドをどこへと繋…

山下晴代第十詩集『鴉』

芭蕉とポーを結ぶ鴉。密室で悪夢と戯れよう。Stay home ! 山下晴代第10詩集『鴉』ご注文はこちらへ↓ https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=1038610120 上記が不都合、ご質問などはこちらへ↓ rukibo@mars.dti.ne.jp

『ファナティック ハリウッドの狂愛者 』──センスはよいがリアリティがないのが致命的(★★★)(ネタバレ)

『ファナティック ハリウッドの狂愛者 』(フレッド・ダースト監督、2019年、原題『THE FANATIC』)(2020/9/23@KBCシネマ福岡) 役者で観る映画がある。トム・ハンクス、ダイアン・キートン、ジョン・トラボルタ……などなど。彼らが出るといえば、とりあ…

【短編を読む】「芝居がはねて」チェーホフ

【短編を読む】「芝居がはねて」チェーホフ、松下裕訳(チェーホフ全集(筑摩書房)第6巻所収、翻訳原稿にして約10枚) 母とともに「エヴゲーニー・オネーギン」の舞台を観た16歳の少女が、芝居の中の少女に影響されて、自室に戻って、衝動的に手紙を書…

【短編を読む】「ミイラとの論争」エドガー・アラン・ポー

【短編を読む】「ミイラとの論争」エドガー・アラン・ポー(翻訳原稿にして400字詰め40枚くらい) はじめ、「ミイラとの戦争」と読んでしまった。はたして、どんな戦争だろう? と思ったが、「論争」であった。少し面白くなくなったが、まあ、読み進んでみよ…

『TENET テネット 』──真の作家(★★★★★)

『TENET テネット 』(クリストファー・ノーラン監督、2020年、原題『TENET』)(2020/09/18@ユナイテッドシネマ、キャナルシティ13) これが時間のループなら、『オール・ユー・ニード・イズ・キル』である。日本人の漫画を映画化したあの作品は、斬新であ…

【同人誌『妃』22号、2020.09】

【同人誌『妃』22号、2020.09】 装丁が美しい。「一番高貴な詩の雑誌」がコピーである。自分で言うか(笑)?と思ったが、同人誌の名前はおろそかにできない。私は、二十代前半、誘われて、『グッドバイ』なる同人誌に入ったが、ぬあんと、それらの同人のう…

【旅の思い出、ニューヨーク】

【旅の思い出、ニューヨーク】 2001.9.11から5年後、2006年1月、貿易センタービル跡地の、「グラウンドゼロ」を訪れた。まだそこは、更地で、泥水が溜まっていた。広さは、ちょっとした街1個分に相当するかと思われた。新しい建物に向け工事中で、平地は、…

【旅の思い出、フィレンツェ」

【旅の思い出、フィレンツェ】2012年11月、『イタリア古寺巡礼』の和辻哲郎のあとを追って(?)、フィレンツェは、アルノ河岸のホテルに滞在した。この河は、 ダヴィンチ村から出てきた、レオナルドが洗濯したり(笑)、ダンテも親しんだ河で、歴史上のさま…

『マイ・バッハ 不屈のピアニスト』──沈黙と測りあう音を探して(★★★★★)

『マイ・バッハ 不屈のピアニスト』(マウロ・リマ監督、 2017年、原題『JOAO, O MAESTRO』) 画家の梅原龍三郎と一年、鎌倉の旅館で生活をともにした小林秀雄は、「一流の芸術家には、徹底したものがある」と、講演のCDで言っているのを何度も聞いたが、…

【詩】「そしてプルースト」

「そしてプルースト」 プルーストが失ったものと引き換えに得たのはシーニュだとしつこく書いたジル・ドゥルーズは、自分の体を自分では思うように動かせない病に罹って、それでは生きている意味がないと、どうにか車椅子だったかで、病室の窓まで移動して、…

【詩】「鴉、あるいは、リゾーム」

「鴉、あるいは、リゾーム」 この、と、あえて言えば、いわゆる「コロナ禍」は、ジャレド・ダイヤモンドの指摘のように、野生動物の家畜化によって、 起こるべくして起こった。つまり、 野生動物を食べることによって。しかし、リゾームは そんな物語さえ一…

妹、小林貴子個展のお知らせ

妹、小林貴子個展のお知らせ。 2020/10/1〜10/6 愛知県豊橋市、ギャラリーNAKA http://www006.upp.so-net.ne.jp/soshite/index.html

【詩】「恐怖という名のアレゴリー」

「恐怖という名のアレゴリー」 私がこれまで読んだ最も恐ろしい物語は ヘンリー・ジェームズの「友だちの友だち」という短編で、個人名はいっさい出てこない。話者が友だちともうひとりの友だちを会わせる話で……いやちがう、話者の知人が書いていた話で、会…

【詩】「きょう、私はきみのことを考える」

「きょう、私はきみのことを考える。」 あの場所。 草が生えていて ドブ川があって 田んぼもあって 記憶のなかのあの場所のことを思う。 それがどんな意味なのか? 生まれてしまったから この地に だからきみの記憶に住み着いた 保育園にいき 生まれてはじめ…

『幸せへのまわり道 』──ハンクスいぶし銀の演技(★★★★★)

『幸せへのまわり道』( マリエル・ヘラー監督、2019年、原題『A BEAUTIFUL DAY IN THE NEIGHBORHOOD』) 模型の列車や町並みから始まるオープニングがなんともまだるっこしい。続いて登場の、子供番組の人気者、フレッド・ロジャースを演じるトム・ハンクス…

【訳詩】「形の共有」(『激高と神秘』)ルネ・シャール

「形の共有」(『激高と神秘』)ルネ・シャール 成熟の年齢に達して、私は生と死のはざまの壁によりかかる梯子が高く延び広がり、その梯子がますますむき出しに、特異な摘出の力、それは夢であるが、それに取り囲まれるのを見た。それらの格子は、成長したの…

【Amazonレビュー】『現代詩手帖2020年 9月号』──「現代詩」はオワコン

『現代詩手帖2020年 9月号』( 2020年8月28日、思潮社刊) ●Amazonレビュー書いたら、すぐに「通った」(笑) 高見順賞をはじめ、さまざまな賞を「牛耳って、この会社が思う「詩壇ヒエラルキー」を形成していたが、高見順賞は終了し、三好達治賞(大阪府が経…

【エッセイ】「高見順」

「高見順」 ●高見順賞という詩のビッグな賞が終了した。大阪市がやっていた三好達治賞も終わった。わりあい華やかだった、資生堂提供の、花椿賞もとうに終わっていて、秋は、毎年詩集発刊のラッシュとなるのだが、さて、今後どうでしょうかね? もともと「詩…

【エッセイ】「『楢山節考』考」

「『楢山節考』考」 ●2018年8月28日に、「詩」として書いていたのがFBの「おせっかい」シリーズ(私が命名(笑))で回ってきた。読み返してみると、悪くないエッセイであるが、「詩」とジャンル分けしてあって愕然とした。これが詩ぃ〜?(爆) **** た…

【エッセイ】「記憶をたどれば……」

「記憶をたどれば……」 最近、今後の世界に関して新しい見方を提案している若い著者を見かけるので、そのなかの一人、落合陽一の著書を買ってみたのだが、いちばん新しいのはろくに開きもせずに、ブックオフ・オンラインに売ってしまって(笑、まー、読む意欲…

【本】『働き方5.0: これからの世界をつくる仲間たちへ』──コンピュータ文化もまたイデオロギー(★★)

『働き方5.0: これからの世界をつくる仲間たちへ』(落合 陽一著、2020年6月3日、小学館新書) 本書で言及されている、「意識高い系」の人というのは、確かに、ネットで、それも、Facebookで、多量に見かけます。しかしこの著者の「意識高い」という、言葉の使…

【昔のレビューをもう一度】『ブラック・スキャンダル』──洗練された21世紀の犯罪(暴露)映画(★★★★★)

『ブラック・スキャンダル』(スコット・クーパー監督、 2015年、原題『BLACK MASS』) 2016年2月1日 7時43分 共感できる人物はひとりも出ない。70年代、FBI最大のスキャンダルとされる、アイルランド・マフィアがからんだ「実話」であるが、いやな感じは少…

『グッバイ、リチャード!』(ウェイン・ロバーツ監督、2018年、原題『THE PROFESSOR/RICHARD SAYS GOODBYE』) 肺がんで、治療すれば一年、もしくは一年半、と、医者が言い、文学の教授のデップは、「治療しなければ?」と問う。医者は答える。「半年」。が…

【詩】「四柱」

「四柱」 こんな夢をみた。 暗がりで木があって時代はいつなのか主体は誰なのかわからない。ただそれは私にとって意外な感じでその意外さは、どちらかといえば心地よいものだった。 褒美として死が与えられる。 女性同性愛者はそれをべつの言葉で置き換え自…

弘田三枝子の「マック・ザ・ナイフ」

(2014年8月18日にFacebookに書いていた) 『マック・ザ・ナイフ』聴き比べミコちゃんの『マック・ザ・ナイフ』すばらしー! ブレヒトの劇『三文オペラ』の劇中歌から生まれたポピュラーソング、『Mac the knife』の、以下、ワタシ的ベスト8。この8人を、iP…

『ポルトガル、夏の終わり 』──うちの民宿にはいろいろな人が泊まりました(★)

『ポルトガル、夏の終わり』(アイラ・サックス監督、2019年、原題『FRANKIE』) フランスの女性は、生涯「女」をやめることができない。ゆえに、女優も、「女」であり続ける役しかできないし、フランス系の映画は、「女」以外の役がない。たとえば、『ビリ…

【詩】「むかしむかし、宇野重吉という役者がいました」

「むかしむかし、宇野重吉という役者がいました」 そう。「むかしむかし」になってしまう。それほど、昔でもないのに。ほんの、五十年程度前?NHKドラマの題名は忘れた時代劇に、どうせ、「忠臣蔵」とか、あんなのが題材だったか。役柄名だけ、「クモのジ…

『ジョーンの秘密 』──演劇界の大御所ナンが描く劇的なる青春(★★★★★)

『RED JOAN』( トレヴァー・ナン監督、2018年、原題『Red Joan』) ドキュメンタリーと銘打たないかぎり、映画というのは、「事実をもとにし」ようが、「事実にインスパイア」されようが、すべて創作と見るべきであり、事実からいかに離れたか、が、作…