現象の奥へ

Entries from 2022-01-01 to 1 year

「夏のテクスト」

「夏のテクスト」宇宙は偶然のなかから生まれたなら、あらゆるテクストはテクストクリティークを、たとえ無意識でも、含んでいなければならず、古今集のなかに柿本人麿の歌が七首混入されていることに留意しなければならず、わがやどの池の藤波咲きにけり山…

「中原中也」

「中原中也」NHKの朝ドラで、差別的な母親が息子の結婚を反対している。相手が大学を出ていない、家柄が悪い……とかなんとか、ありきたりのいちゃもんをつけて。その母、鈴木保奈美が演じているが、中原中也を愛読している。一方息子も、心優しき恋人に諭…

『キャメラを止めるな!』──勘違い!(★)

『キャメラを止めるな!』(ミシェル・アザナヴィシウス監督、2022年、原題COUPEZ !/FINAL CUT) メイク先のもとになった映画は、確かに「予想に反して」大ヒットしたが、それは、観客が、素人映画だとたかをくくって見始めて、だんだん凄い展開になっていっ…

「アフロディーテーを待ちながら」

「アフロディーテーを待ちながら」百億光年の光のなかから、すべての愛、のようなものを否定して、帰って来いアフロディーテー、最愛の女。その都市にはすでに名前はなく、男の名前もついぞおまえの記憶から消えた。ある星のエネルギーのように、まだ解明さ…

「固有名」

「固有名」 「人物の名を語ること、それは顔を表現することである。ありとあらゆる名詞や常套句の只中にあって、固有名は意味の解体に抵抗し、私たちの発語を支えてくれるのではないだろうか」(エマニュエル・レヴィナス)そこで積み重なる日々は習慣という…

「ジアコモ・レオパルディがどんな詩人か、『春の雪』のなかでフランス人に知らしめたのは、三島由紀夫である」

「ジアコモ・レオパルディがどんな詩人か、『春の雪』のなかでフランス人に知らしめたのは、三島由紀夫である」Le monde n'est que fange.「そして世界は泥である」と、ベケットは、プルースト論のエピグラムとして、レオパルデイの詩の一行を掲げた。この、…

「ロラン・バルトは舟木一夫のことをいい男だと思っている」

「ロラン・バルトは舟木一夫のことをいい男だと思っている」日本をopaque(不透明な)の国と規定するバルト。ちょうど朝霧に包まれた水辺をゆったりと舟がゆくように、バルトの視線は日本国を流れていく。眼にとまったのは、武将姿のいい男。Que beau homme …

「一冊の書物」

「一冊の書物」ボルヘスに同題の詩があるが、これはそれとは関係ない。女は殺し屋で、同時に古書店を営んでいて、あるとき、男がやってきて、古書好きのひとに贈るのだがと切り出す。それでは、あれがお勧めですわ、女は書棚の扉を鍵で開けて一冊の書物を取…

『マーベラス』──マイケル・キートンを"恋人役"に持ってきたところがこの映画の新しさ(★★★★★)

『マーベラス』(マーティン・キャンベル監督、2022年、原題『The Protege』) 「恋人」たって、かなりひねくってある恋人だが(笑)。 原題は、『The Protege』(邦題は「マーベラス」(marvelous)で「すばらしい」という意味だが、むしろ内容から遠くなっ…

「夢」

「夢」たいていの人は、自分の見た夢を、言葉で表現する。それも、自分が受けた教育の範囲でつかんだ整合性の枠に通じる言葉で。夢は言葉なのか?夢はイメージなのか?夢は記憶なのか?前頭葉の発露なのか?ひとは夢をストーリーに置き換える。その置き換え…

【SP】シークレットサービス

【SP】シークレット・サービス思想とか政治はそれぞれに立場で侃々諤々出てこようというものだが、誰が撮ったか、さまざまのフィルムを編集して、「定点観測」として提出しているNHKを見ると、やはり最初に観察したとうり、警護が信じられないほど甘い…

安倍元首相暗殺事件

奈良市近鉄大和西大寺駅周辺元首相襲撃事件@ホームチェア安倍元首相がこの現場で講演することは数日前に決まったという。一方、奈良市在住の容疑者は、所持の武器や、自宅の武器、危険物等は、何年もかかるような準備。現場で居合わせた人々がスマホ等で撮…

「漱石、漱石と出会う」

「漱石、漱石と出会う」漢詩の詩形は古詩と近体詩。古詩は一句の中の韻律の形、平声(ひょうしょう)の字と仄声(そくしょう)の字配置が自由、長さも自由。近体詩は、平仄の配置に定型があり従うのが礼儀。長さも、八行は律詩、四行は絶句。文科二年の漱石…

フーコーを読む、その2

【フーコーを読む2】「言葉と物」2 (承前)ébranlant toutes les surfaces ordonnés et tous les plans qui assagissent pour nous le foisonnement des êtres, faisant vaciller et inquiétant pour longtemps notre pratique millénaire du Même et de l…

フーコーを読む、その1

【フーコーを読む】Michel Foucault の書物は、没後出た、著書以外の文献等を集めた「全集」"Foucault Dits et écrits Ⅰ, 1954-1975", "Ⅱ”, 1976-1988. それに著書として刊行されている論文がすべてである。この翻訳は、日本で出ているが、こともあろうに、…

「ピーター・ブルック」

「ピーター・ブルック」私の人生に影響を与えた一人に、高校生の時出会い、芝居には衣装も装置も道具もなくていいんだと知った。その後、高校生の演劇コンクールで、舞台の上に俳優が椅子と衣装の包みを持ち込み、そこで着替えるという脚本を書いた。演劇コ…

『ベイビー・ブローカー』──自己模倣の下降スパイラル(★)

『ベイビー・ブローカー』(是枝裕和監督、2022年) どんな世界でも一度話題になり名前が出てしまうと、その後、その人のキャリアの終わりまで、誰かは見て、なにか言ってくれ、なんらかの賞までもらえる。しかし、真の観客は失望し続ける。それを体現してい…

「モランディの色」

「モランディの色」Raw sienna──見た目、薄茶色。遠い草原のコオロギたちの寝場所。Warm grey deep──暖かい眠り。Greenish umber──終わっていく夏休み。Perm.blue violet──破滅をはらんだ淡い恋心。Yellow ochire──獣たちの会議。Cold grey deep──懐かしい香…

「太陽と月に背いて」

「太陽と月に背いて」見つけた! 何を! 永遠を!ディカプリオの長い脚。小林秀雄が卒論の面接で、フランス語で聞かれた。ランボーはどんな詩人か?論文の仏文はすばらしかったが、小林は会話が得意でなく、ランボー、グランポエット。を繰り返すのみ。私は…

「血まみれピーナツ」

「血まみれピーナツ」やっちまった、やっちまった、やちまたは、ピーナツのまち、ではない。もはや、やっちまった、やっちまった、やちまたは、危ない通学路のまち、やっちまった、やっちまった、小学生の通学の列に、クルマが突っ込んだ、だって、舗道もな…

峯澤典子詩集『微熱期』(2022/6/15、思潮社刊)

『微熱期 』(峯澤典子著、2022年6月15 日、思潮社刊)──祈りのような言葉 このような詩編をも生み出さすことができず、癒やされずに、世の中でわめき散らしている老人も詩人も子供も少女も多い。固有名詞を持たないのか、それらを排除して、抽象的な薄っぺ…

「論語に捧ぐ」

「論語に捧ぐ」金持ち奥さまの婆さん詩人と、その他、二名の詩人が、そのうちの一名の詩集を海岸の砂に埋め、弔いをしたという。なんたるおごったことをと、私は思った。あくまで私のイメージだが、書物を砂に埋めることによって、弔いをするというおごった…

「アレフ、片隅で光る非存在」

「アレフ、片隅で光る非存在」 世界がまだ睡魔と戦っていた頃、 眠りに落ちる寸前に見える光景、 それこそ人間の脳にはめ込まれた原風景であり、 全宇宙の姿と言っていい。 すべての忘却を消すために、 ハムレットはロミオと入れ替わってみようと思った。 幾…

ルノワールの『花束』(オランジュリー美術館)の模写@アクリル

ルノワールの『花束』(オランジュリー美術館)の模写@アクリル

「Oh, Ulysses! 」

「Oh, Ulysses! 」James Joyce was born in Dublin on 2 February 1882. He was the oldest of ten children in a family which, After brief prosperity, collapsed into poverty.真っ二つに裂けてしまったペーパーバックの、まだ甘い朝の空気を放つ午前、M…

細田傳造の最新詩「森の方へ」「燃えるゴミの日のラファエル」@『Ultra BardS(ユルトラ・バルズ)』Early Summer 2022 vol.37 印刷はきれいな、エリート臭漂う、しかし編集センスは決してよくない、そういう同人誌(にも)、細田傳造は加わっている。それ…

細田傳造の最新詩「森の方へ」「燃えるゴミの日のラファエル」@『Ultra BardS(ユルトラ・バルズ)』

細田傳造の最新詩「森の方へ」「燃えるゴミの日のラファエル」@『Ultra BardS(ユルトラ・バルズ)』Early Summer 2022 vol.37 印刷はきれいな、エリート臭漂う、しかし編集センスは決してよくない、そういう同人誌(にも)、細田傳造は加わっている。それ…

ミシェル・フーコー『臨床医学の誕生』

『臨床医学の誕生』(ミシェル・フーコー、神谷美恵子訳、みすず書房、原題『Naissance de la clinique』1963年刊) フーコーのレビュー作、ビンズワンガーの『夢と実存』の、本文より長い序文、と重なるところのある著作である。つまり、医学はどこから科学…

ベルナール=アンリ・レヴィ著『危険な純粋さ』

『危険な純粋さ』(ベルナール=アンリ・レヴィ著、立花英裕訳、1996年刊、紀伊國屋書店、原題『La pureté dangereuse』(1994))──結局、レヴィの予見の通りの世界になった? フランスの「現代思想」花盛りののち、やってきた「新哲学派」。とはいうものの、…

【詩】「ある詩を考えながら、ほかの詩を思い出すこと」

「ある詩を考えながら、ほかの詩を思い出すこと」 Où maintenant? Quand maintenant? Qui maintenant? Sans me le demander. Dire je. Sans le penser. Appeler ça des questions, des hypothèses. Aller de l'avant, appeler ça aller, appeler ça de l'ava…