現象の奥へ

Entries from 2023-01-01 to 1 year

【詩集】江夏名枝『あわいつみ』(澪標、2020年刊)

江夏名枝『あわいつみ』(澪標、2020年10月10日刊)40ページのなかに散らされた「ことば」は、一行の時もあり、数行の時もある。アフォリズムほど力強くない「ことば」が「落とされている」ような。カバーは淡い紫色。遊び紙が淡い黄色の高級そうな紙。半透…

『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(ダニエル・クワン、ダニエル・シャイナート監督)──映画の時代が終わったあとの新生映画(★★★★★)

『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(ダニエル・クワン、ダニエル・シャイナート監督)──映画の時代が終わったあとの新生映画(★★★★★) すでに映画の時代は終わり、もう感動とか物語とか、かっこいい美形のヒーロー、ヒロインで、観客…

【詩】「ダンテ」

「ダンテ」うとうとしていたら、ダンテが夢に現れて、日本語で言うのだった──こら、おまえ、わたしの経験によれば、詩の鑑賞はその詩人や仕事について、知らなければ知らないほど、理解できるものなんだ。だからさ、その詩人について、歴史的背景などをよお…

【詩】「梅」

「梅」暮ると明くと目かれぬものを梅の花いつの人間(ま)にうつろひぬらむ (紀貫之)われらが「古今」から学ぶは郷愁、惜しむきもち。死ぬまで繰り返される一年の、その尊さの飽き。梅を女とみて。夜のなかに香しさを堪能する、ここはどこでもない、あなた…

【詩】「異邦人」

「異邦人」メールデセデ、オンテールマン、ドゥマン。サンティマン、ディスタンゲ。文面の素っ気なさが太陽の照り返しにすべての物語がすでに終わったことを告げていた。おれは渋った顔の上司に休暇をもらい、出かけた。どこへ? 老人ホームのある場所へ。そ…

ポール・ド・マン著『読むことのアレゴリー』

ポール・ド・マン『読むことのアレゴリー』(土田知則訳、2022年12月、講談社学術文庫。もとの本は2012年岩波書店)──著者は「脱構築」を理解していない フランスで「現代思想」(というジャンルで括っているのは日本だけとか)がはやり(はやっていたのも、…

蓮實重彥著『ゴダール革命』(2023年2月、筑摩書房刊)

蓮實重彥著『ゴダール革命』(2023年2月10日、筑摩書房刊)──どうするゴダール? 特別新しい本ではなく、2005年に出た本の増補版である。「どうすればよいのか」。人は優れてゴダール的ともいえるこのつぶやきを、処理しがたい難問を前にしてみだりに口にし…

スピルバーグ監督『フェイブルマンズ』

『フェイブルマンズ』(スティーブン・スピルバーグ監督、THE FABELMANS)──映画の時代の終わりを察知した作りになっている。 映画館で映画を観るという時代は、いまはなくなってないが、すでに終わっている。新型コロナに端を発する、そして戦争や事件や政…

【詩】「パウル・ツェランに会えなくて」

「パウル・ツェランに会えなくて」閾から閾へ、パウル・ツェランを追ってみたが、結局、会えなかった。すでにして、彼はセーヌに身を投げていた。浅そうに見えるセーヌも、溺死するほどに深いのか?T.S.エリオットの男の愛人も水死して、ベンヤミンは服毒自…

【詩】「外典」

「外典」少女と老婆がいっしょに妊娠し、いっしょに産もうね(はぁと)といったハナシは、新訳の外典に記されている。それをレオナルドは、大天使ガブリエルの「告知」として、新しい画材である、油絵の具で描いた。当然、ほかの画家も描いているテーマでは…

【詩】「そしてオーデンに送る手紙」

「そしてオーデンに送る手紙」 夜は遅い、いつものように新年が来て、 静かというには少し残念な…… そばに川が流れておれば、 きみは果報者。 遠さと近さ、 もの音とささやき、 過去の時間がきみのなかで 混じり合うとき、 昔観た芝居の劇そのものではなく …

【短歌】歌集『デラシネは五木寛之』より、その2

歌集『デラシネは五木寛之』より2「欧米の方法」 詩や短歌いきなり子どもに作らすなまづは名作暗記から始めよ

猫的俳句

にゃにゃんがにゃん@猫の日(2月22日)だと〜。すごい! 9年前のけふ、すでにやっていた。山下マイケル。 「誤字だらけ猫の恋文わたさうか」

【短歌】「パンダ」

貸し出され返されてゆく意味知らず笹食うパンダの姿哀しき

【詩】「オイディプスあるいは無意識の物語」

「オイディプスあるいは無意識の物語」やさしいフランス語で、『アンチオイディプス』という本は何を言おうとしているのか?「分析」という妄想を、りっぱな「理論」のために使った「物語」を証そうとしている。それは、嘘、嘘の物語。しかし、物語というも…

【詩】「あるいは、反転という名の兎」

「あるいは、反転という名の兎」大きくなり同時に小さくなる上昇であり同時に落下であるいくつもの冒険はたったひとつの冒険であるしかして因果関係は分離されるストア学派的いねむりののちうさ公は山下さんちの裏庭のうさぎ小屋から出されたなんで?売られ…

【短編を読む】『桜桃』太宰治

【短編を読む】『桜桃』太宰治(初出、昭和23年「世界」5月号)四百字詰め換算約19枚。「日本語の勉強のため」編集者のすすめで、「現代短編名作選」(日本文芸家協会編、講談社文庫(であるが、今は入手困難))を読んでいて、10冊あるうちの、第1集である…

【詩】「シルト」

「シルト」生は詩から成り立っています。(ボルヘス)私はオルセンナでは最も古い一族の出です。あるとき、「命令」が来て、兵役のために旅立ちます。「命令」はどこから来たのか?この「国」の政治形態は?書きかけた小説。誰が書き始めたのか?その空の棺…

【詩】「マラルメ日記」

「マラルメ日記」やさしそうな題名のもと、やさしそうなテクストの書きようそんな詩を軽蔑するやからがいる。難しい、おしゃれな、知的な詩こそ、詩である、と。隠喩、暗喩、アレゴリー、鏤められたボードレールの墓、あるいは、エドガー・ポーの墓。マラル…

【詩】「猫の名前(Cats Name)」

「猫の名前(Cats Name)」The Naming of Cats is a difficult matter, (T.S.ELIOT)ずいぶんと猫を飼った、名前は忘れた。一匹だけ覚えているのは、ゴドー。飼った時期は、高校時代と、すぐ思い出せる。それより前は、ゴドーなんて思いつきもしない。高一の…

【詩】「ヘレナよ、」

「ヘレナよ、」きみの髑髏(されこうべ)を、なんの感慨もなく踏みつけていくやつがいて、そいつを許したまえ。時はそれほど長く流れたというわけではない、我々は苦しい思いをしたが美を勝ち取ったというわけではない。地中のなかから突き上げる力が建物を…

【詩】「寅さん」

「寅さん」寅さんは毎年、映画のはじまりで、どこかから帰ってくる。笠智衆のお寺の坊さんが門前で掃除をしているところに現れ、「ああ、ことしもトラが帰ってきたか」と言わしめる。この、あまりに大衆的すぎる映画を私は何度も見たわけではないが、その「…

【詩】「トルコの地震」

「トルコの地震」宇宙に浮いている球形のなかで起こる異変。おもに、落下──夢よ、すべてを燃え上がらせよ、

【詩】「鴉」

「鴉」かつて鴉という詩を書き、鴉という詩集を出した、それでも鴉はわがベランダに薄くなった石鹸を求めてやってきた、それは死んだ愛犬の生まれ変わりを願うために、京都は常寂光寺へ出かけた日、家人も外国旅行で留守で、誰もいないのをいいことに鴉はベ…

恵方巻を作ってみまちた。

恵方巻を作ってみまちた。

最果タヒ詩集『不死身のつもりの流れ星』(PARCO出版、2023/2/1 )──すでに陳腐化(★★★)

最果タヒ詩集『不死身のつもりの流れ星』(PARCO出版、2023/2/1 )──すでに陳腐化(★★★) 新しいものも、画期的と思える感性も、書き方も、詩というものへの味方も、同じスタイル感覚を繰り返せば、陳腐化する。出版社は変わっても、装幀は似たようなシリー…

20年前の菊之助はマイケル・ジャクソンくりそつだった(笑)

いやん。18年前のキクちゃんじゃん。国立劇場、演出でたらめ。オトッツァンの菊五郎は、この『伊達騒動』で、マツケンサンバ踊ってやんの。台詞は何回もとちるしー(笑)。かぶりつきで見てたので、ナマナマしかったわん。

天沢退二郎氏@1月25日

天沢退二郎氏を譚海へと送りだす。r.i.p

【訳詩】Samuel Beckett "Collected Poems in English & French"

【訳詩】elles viennentautres et pareillesavec chacune c'est autre et c'est pareilavec chacune l'absence d'amour est autre avec chacune l'absence d'amour est pareillethey come different and the samewith each it is difference and the samewit…

【詩】(無題)

(無題) 「これはこれは、忘れようとして思い出せない」 かつて、漫才の京唄子の相棒、鳳啓助は言うのだった。 漫才がベケットの芝居そっくりであった時代。